健康経営のコミュニケーション施策は何が正解?認定要件と定着のポイント

健康経営優良法人の認定に向けて準備を進めるとき、健康診断の受診率やストレスチェックの実施といった項目は、数字で示しやすいかもしれません。一方で、手が止まりやすいのが「コミュニケーションの促進」に関する項目です。

同好会をつくるべきか、社内イベントを企画すべきか。何かを始めなければと考えつつ、現場に新しい負担を増やすことにためらいを覚える。そんな声を聞くことがあります。

この項目には、もう一つ見落とされやすい特徴があります。施策を実施しているかどうかだけでなく、施策の種類に応じて、どれだけの従業員を対象としているか、実際にどれだけの従業員が参加しているかも問われるという点です。
制度として用意するだけでなく、その対象範囲や利用・参加の実態を把握しておくことが重要になります。

本記事では、健康経営においてコミュニケーション施策がどう評価されるのかを調査票から整理したうえで、要件を満たしながら、職場に根づく施策とは何かを考えます。

目次

健康経営のコミュニケーション施策は何が正解?認定要件と定着のポイント

1. 健康経営の認定要件に含まれる「コミュニケーションの促進」

健康経営優良法人の認定は、経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令遵守・リスクマネジメントという5つの側面から評価されます。

このうち「制度・施策実行」のなかに職場の活性化という中項目があり、そこに「コミュニケーションの促進に向けた取り組み」が評価項目として設けられています。

大規模法人部門では17項目中14項目以上が必要

大規模法人部門(健康経営優良法人2026)では、必須項目をすべて実施したうえで、評価項目①〜⑰のうち14項目以上を満たす必要があります。コミュニケーションの促進は、このうちの評価項目⑦にあたります。

17項目のうち14項目という水準は、落とせるのが3項目までということでもあります。喫煙対策、女性の健康、高年齢従業員への対応など、どの項目も準備を要するなかで、コミュニケーション施策を取りこぼす余裕は多くありません。

ただし、すべての選択項目を満たす必要があるわけではなく、他の項目の達成状況も踏まえて判断することになります。

中小規模法人部門でも評価項目の一つ

中小規模法人部門でも、「コミュニケーションの促進に向けた取り組み」は評価項目として設定されています。

求められる項目数は大規模法人部門と異なりますが、上位認定であるブライト500を目指す場合には、より多くの項目を満たす必要があります。

規模を問わず、職場のコミュニケーションが健康経営の評価対象に含まれている。この点は押さえておきたいところです。

参考:
令和7年度 健康経営度調査(大規模法人部門)調査票サンプル|健康経営優良法人認定事務局
健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件|健康経営優良法人認定事務局

2. 調査票で問われるコミュニケーション施策の中身

では、どのような取り組みが評価の対象になるのでしょうか。令和7年度の健康経営度調査では、コミュニケーション促進に関する設問(Q46)で、感謝を伝え合うことへのインセンティブ付与も、コミュニケーション促進に向けた取り組みの一つとして明記されています。

調査票では、コミュニケーション促進に向けた取り組みとして、従業員参加型と環境整備型の施策が挙げられています。認定を目指す際には、各取り組みの実施内容や回答条件を確認することが重要です。

従業員参加型の取り組み

同好会やサークル等の設置と金銭支援や場所の提供。社員旅行や家族交流会、昼食会といったイベントの開催や支援。

ボランティアや地域祭り等への組織的な関与と、従業員への参加の働きかけ。この3つです。

環境整備型の取り組み

フリーアドレスオフィス等の職場環境整備。社内ブログ・SNSやチャットアプリ等のツール提供。

そして、従業員同士が感謝を伝え合うことに対してインセンティブの付与を行っていること(社内通貨、社内サンクスポイント制度等)です。

なお、研修・情報提供・宴会等はこの設問の対象から除かれ、スポーツイベントの補助などは運動習慣に関する別の設問で回答することとされています。

※ここで紹介した設問は、健康経営優良法人2026の大規模法人部門に用いられた「令和7年度健康経営度調査」のものです。中小規模法人部門では申請書と回答条件が異なるため、各部門の認定要件をご確認ください。

参考:
令和7年度 健康経営度調査(大規模法人部門)調査票サンプル|健康経営優良法人認定事務局

3. 施策を実施するだけで十分?調査票で問われる参加状況

ここからが、この項目の難しいところです。調査票では、取り組みの有無を答えて終わりではありません。

対象者比率と参加者比率の回答が求められる

従業員参加型の取り組みを実施している場合、最も重点的に取り組んでいる内容を選び、その具体的な内容を記入したうえで、全従業員に占める対象者の比率と、対象者に占める参加者の比率を回答します。

環境整備型の場合も、対象者の比率を回答することになっています。

制度として用意していても、実際に使われていなければ、その状況が数値として表れます。形だけ整えた施策は、回答の段階で実態が見えてしまうということです。

回答内容は公開される可能性がある

さらに、調査票では評価結果および一部設問の回答内容について、ウェブサイト等での公表が予定されています(公開対象や同意条件は調査票Q6を確認してください)。

公開予定項目には各施策の参加率に関する回答が含まれており、コミュニケーション促進に関する設問もその対象です。

投資家や求職者を含むステークホルダーが参照するデータベースとして公表されることを踏まえると、参加率は社外の目にも触れうる数値だといえます。

健康風土の把握でもコミュニケーションが問われる

評価・改善の領域でも、コミュニケーションは登場します。健康経営の継続的な実施による健康風土の醸成状況をどう把握しているかを問う設問では、定量的な把握の方法として「従業員間におけるコミュニケーション量・頻度の変化」「チームや部署を超えたコミュニケーション量・頻度の変化」が選択肢に挙げられています。

施策を実施するだけでなく、その結果として職場のコミュニケーションがどう変化したかを把握できているか。そこまでが問われているということです。

参考:
令和7年度 健康経営度調査(大規模法人部門)調査票サンプル|健康経営優良法人認定事務局

4. インセンティブだけでは、感謝は根づかない

認定制度では、施策の実施状況や対象範囲などが評価されます。一方、企業が健康経営に取り組む本来の目的は、認定を取得することだけではありません。従業員が心身ともに健やかに働ける環境をつくることです。

では、コミュニケーション施策を単なる認定対策で終わらせないためには、何が必要なのでしょうか。

調査票では、感謝を伝え合うことへのインセンティブ付与が、コミュニケーション促進施策の一つとして挙げられています。しかし、ポイントや報酬の仕組みを設けることと、それが職場で実際に活用され、良いコミュニケーションにつながることは別の問題です。

気をつけたいのが、インセンティブの設計によっては、感謝を伝えることよりもポイントを獲得することが優先されてしまう可能性があるということです。

「ありがとう」は、本来相手に向けられた言葉です。ところが報酬と強く結びつくと、関心の向きが相手から自分へと移っていきます。

誰に送ったかよりも、何枚送ったか。何を伝えたかよりも、いくら貯まったか。送る理由が変わってしまうと、受け取る側にもそれは伝わります。

枚数や獲得ポイントだけに関心が向くと、相手のどのような行動に感謝したのかという、メッセージ本来の意味が薄れてしまうおそれがあります。

ポイント制度を形だけで終わらせないために

ポイント制度は、感謝を伝えるきっかけとして有効な選択肢である一方で、ポイントの獲得だけが目的になると、制度の利用が形式的になってしまう可能性もあります。

大切なのは、制度を通じて感謝を伝える習慣を育てることです。

健康経営の認定は毎年度の申請が必要です。一度きりの盛り上がりではなく、実施内容に対して続いている状態が求められます。

認定要件を満たすことは一つの目標ですが、その先にあるのは、従業員が日常的にコミュニケーションを取りやすい職場づくりです。制度を整えるだけでなく、無理なく続けられる仕組みにすることが大切です。

感謝を伝え合う習慣が職場に根づけば、制度への継続的な参加も期待できます。参加率という数字だけを追うのではなく、従業員が自然に利用したくなる仕組みを考えることが重要です。

インセンティブは目的ではなく、きっかけとして

では、インセンティブに意味がないのかというと、そうではありません。感謝を伝える習慣がない職場で、最初の一歩を後押しする役割はあります。

大切なのは、インセンティブを目的ではなく、きっかけとして位置づけることです。はじめは制度に背中を押される形で始まったとしても、送られた言葉に相手が反応し、それが次の感謝を生む。

仕組みをきっかけに、感謝を伝え合う文化を少しずつ育てていく。それが理想的な活用のあり方ではないでしょうか。

関連記事:
ウェルビーイング経営とは?「測る」と「動かす」で感謝が満ちる組織を目指す|GRATICA

5. 長く続けられるコミュニケーション施策の選び方

前章の考え方を踏まえると、施策を選ぶ際の視点も見えてきます。

誰もが参加しやすい施策を選ぶ

社員旅行やイベントは企画としては明快ですが、全従業員が参加できるとは限りません。

勤務形態や家庭の事情、拠点の違いによって参加できる人とできない人が分かれ、結果として対象者比率や参加者比率が伸びにくくなります。

日常業務の中で利用できる仕組みであれば、より多くの従業員に参加・利用の機会を提供しやすいと考えられます。

日常業務に組み込める施策を選ぶ

年に一度のイベントは、実施した年は回答できても、翌年以降も同じ水準を維持できるとは限りません。

日常の業務に組み込まれた施策であれば、意識的に続けなくても自然に積み重なっていきます。運用の負担が小さいことは、継続性の面で大きな意味を持ちます。

やり取りが記録に残る施策を選ぶ

コミュニケーション量や頻度の変化を把握しているかどうかも問われます。実施の記録が残らない施策では、変化を説明することが難しくなります。

やり取りがデータとして蓄積される仕組みであれば、どの程度のコミュニケーションが生まれているかを後から確認できます。申請時の回答根拠としてだけでなく、自社の状態を把握する材料にもなります。

感謝を伝え合う仕組みという選択肢

デジタルサンクスカード「GRATICA(グラティカ)」は、社員同士が感謝をカードにして送り合えるサービスです。1,500枚以上のデザインから選べ、特別な時間を取らずに日々の業務のなかで送り合えます。

感謝を伝えるとサンクスポイントが蓄積され、デジタルギフトなどと交換できる仕組みも備えています。

管理画面では、カードの送受信数ややり取りの傾向を確認できます。職場でどの程度のコミュニケーションが生まれているか、部署を越えたやり取りがあるかを把握する材料になります。

ただし、前章で述べたとおり、ポイントはあくまできっかけです。GRATICAが大切にしているのは、感謝の言葉そのものが交わされる状態をつくることです。

認定要件を満たすことを目的に導入するのではなく、職場に感謝が流れる状態をつくった結果として要件も満たされている。その順序でこそ、施策は続いていきます。

関連記事:
組織サーベイを「実施するだけ」で終わらせないために。改善につなげる新しい仕組み|GRATICA

6. まとめ

健康経営におけるコミュニケーション施策で大切なのは、認定要件を満たすだけでなく、従業員が無理なく参加でき、長く続けられる仕組みをつくることです。

健康経営優良法人の認定では、コミュニケーションの促進に向けた取り組みが評価項目の一つとされています。調査票には、社内イベントや職場環境の整備、感謝を伝え合う仕組みなどが挙げられており、取り組みの実施状況に加えて、施策の種類に応じて対象者比率や参加者比率なども問われます。

だからこそ、参加のハードルが低く、日常業務に組み込めて、変化を把握できる施策を選ぶことが重要です。

感謝を伝え合う仕組みも、その選択肢の一つです。ポイントや制度をきっかけに、感謝が自然に交わされる職場を育てていく。

認定を一つの目標としながら、その先にある働きやすい組織づくりを目指す意識が大切です。

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参考文献

令和7年度 健康経営度調査(大規模法人部門)調査票サンプル|健康経営優良法人認定事務局
健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件|健康経営優良法人認定事務局
ACTION!健康経営(健康経営優良法人認定制度)

株式会社オーケーウェブ GRATICA編集部

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