人事評価の半期レビュー、数字にならない貢献をどう評価し、どう伝えるか

半期レビューで評価を決めるとき、売上や達成率といった数字は判断しやすいものです。難しいのは、数字に表れない働きの評価です。
チームの穴を埋めた、後輩を支えた、部署間の調整を引き受けた。組織にとって欠かせないこうした働きを、どう評価し、面談でどう伝えるか。

この記事では、その難しさがどこから生まれるのかを分析したうえで、数字にならない貢献を評価し、納得感を持って伝えるための進め方を整理します。

目次

人事評価の半期レビュー、数字にならない貢献をどう評価し、どう伝えるか

1. 人事評価に対する評価者と被評価者の意識の差

まず、半期レビューをめぐって評価する側とされる側が何を感じているのかを把握しておきましょう。調査を見ると、両者の認識には大きな開きがあります。

評価する側は、8割近くが「適切に評価できている」と考えている

アデコが2018年に20代から60代の働く人1,532人を対象に行った「人事評価制度」に関する意識調査では、部下を評価する立場にある人に対して、自分が適切に人事評価を行えているかを尋ねています。

その結果、「そう思う」「どちらかというとそう思う」の合計は77.8%にのぼりました。

ただし、内訳を見ると印象が変わります。「そう思う」と言い切った人は16.8%にとどまり、大半は「どちらかというと」という留保つきの回答でした。

多くの評価者は、適切に評価しているつもりでいながら、確信までは持てていないということです。

評価される側は、6割以上が不満を持っている

一方、同じ調査では、人事評価制度に「どちらかというと不満」「不満」と答えた人が全体の62.3%でした。被評価者に限って見ても、満足している人は35.7%にとどまっています。

不満の理由として最も多かったのは「評価基準が不明確」で、次いで「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」。

その後、「評価結果のフィードバック、説明が不十分、もしくはそれらの仕組みがない」が続きます。

評価する側の8割近くが「自分は適切に評価できている」と答える一方、評価される側で制度に満足している人は3割台にとどまります。

こうした認識の差が生まれる背景の一つに、評価の根拠が十分に伝わっていないことが考えられます。

不満の上位3項目が、いずれも「基準がわからない」「ばらつきを感じる」「説明が足りない」という、説明と納得に関わるものである点が、それを裏づけています。

評価者がつまずくのは、数値化しにくい業務

では、評価者は具体的にどこで難しさを感じているのか。
同じ調査では、自身の評価行為に自信がないと答えた評価者について、その半数が「数値化しにくい業務」の評価に難しさを感じていることが示されています。

売上や達成率であれば、数字を示すだけで根拠になります。しかし、周囲の支援や調整といった働きには、示せる数字がありません。

だからこそ評価に迷い、面談でも言葉に窮します。半期レビューの難しさの一つは、評価する意欲や能力の問題だけでなく、数字以外の貢献を語る根拠が手元にない点にあります。

参考:
「人事評価制度」に関する意識調査(アデコ株式会社)

2. 数字にならない貢献も、人事評価を考えるうえで重要な材料になる

そもそも、数字に表れない働きは、評価に含めてよいものなのでしょうか。ここが曖昧なままだと、評価者は自信を持って伝えることができません。

この点について、公的な人事評価の手引きにヒントが書かれています。

内閣人事局・人事院が公表している「人事評価ガイド」では、業績評価で勘案すべき要素として、目標の困難度や貢献度に加えて、組織として成果を挙げるに当たってどの程度貢献できたか(知見や経験の積極的な活用による成果への貢献、周囲への支援等の取組)が挙げられています。

所見に記載する例としても「周囲へのサポートや部下の指導・育成に多大な貢献をした」が示されています。

さらに同ガイドでは、目標として掲げた業務以外に突発的な事案への対応などがあった場合、その内容を所見欄に記載し、評語を付与する際に必要に応じて勘案するとされています。

目標管理の枠の外にある働きも、評価の視野に入れるべきものとして扱われているということです。

つまり、数字にならない貢献を評価することは、評価者の裁量や温情ではありません。

民間企業の人事評価制度にそのまま当てはまるものではありませんが、評価を考えるうえで参考になる考え方です。

少なくとも、成果を数字だけで捉えるのではなく、組織成果への貢献や周囲への支援も評価材料として捉える考え方が示されています。

難しいのは、こうした貢献を評価しようとしても、それを裏づける具体的な事実が評価者の手元に十分残っていないケースがあることです。

貢献が評価に反映されないと、不満が残る

周囲への支援や追加対応といった貢献が評価に反映されないと、評価される側に不満が残ることがあります。

Job総研(パーソルキャリア)が2025年10月に公表した調査(20代から50代の就業者、731件の投稿)では、「自分より仕事をしていない人と同じ評価だった」という不満に対し、87.5%が「共感する」と回答しました。20代では90.9%にのぼります。

同じ調査では、人事評価の結果に納得していない人が40.9%、自己評価との間にギャップがあったと答えた人が63.8%でした。

寄せられた声には、休職者が出た分を追加人員なしで乗り切ったのにプラス評価がなく同じ評価だった、先輩の仕事を代わりに対応していたのに同じ評価だった、といった内容が並びます。

いずれも、周囲への支援や追加対応といった働きが、期待ほど評価に反映されなかった例です。

こうした働きを評価材料として扱うためにも、期中から具体的な事実を残しておくことが重要です。

参考: 「人事評価の結果」に関する調査(Job総研/パーソルキャリア、2025年10月)
人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》(内閣人事局・人事院、2022年6月版)

3. 評価の根拠を期中に残す4つの方法

数字以外の貢献を評価し、それを伝えられるようにするには、期末に記憶をたどるのではなく、期中のうちに事実を残しておく必要があります。

人事評価ガイドでも、評価材料としての行動についての記憶は時間の経過とともに鮮明でなくなるため、必要に応じて記録に留めておくことも有益だとされています。

あわせて同ガイドは、評価期日に近い時期の事実のみをとらえて評価するのではなく、評価期間の全期間にわたる事実に基づいて評価することが必要としています。

半期レビューの精度は、レビュー当日ではなく、期中の過ごし方によって決まる側面もあるのです。

月に一度、評価をつけずに事実だけを書き留める

難しく考える必要はありません。「今月、〇〇さんが△△の案件を引き継いだ」「後輩の立ち上がりを支援していた」といった事実を、日付とともに短く残しておきます。

評価をつけようとすると手が止まるので、この段階では事実の記録に徹します。半年分が揃えば、面談で示せる具体的な根拠になります。

1on1で、本人と事実認識を共有する

人事評価ガイドは、期中の行動観察の手段として、日常業務でのやりとりに加えて1on1などを活用し、定期的な対話の機会を設定することを挙げています。

あわせて、業務遂行状況について本人と認識を共有しておくことは、評価結果の納得感につながるとしています。

すでに1on1を行っているなら、目標の進捗に加えて「今月は誰を手伝ったか」「どこで負荷がかかったか」を聞いておきます。

本人の口から出た事実は、評価者が見ていなかった働きを知る手がかりになります。この時点で認識を共有しておけば、期末の面談で評価が初耳になる状態を減らすことにもつながります。

目標以外の取組を書き留める場所をつくる

期首に立てた目標だけを見ていると、突発的な対応や周囲への支援は視野の外に置かれます。評価シートやメモに「目標以外の取組」を書く欄を設けておくと、気づいたときに残せます。

前述のとおり、こうした取組は所見に記載し、評語を付与する際に勘案することが想定されています。

見えにくい貢献も、記録に残せる状態にしておく

評価者一人の観察だけでは、日々のすべての支援や協力を把握することはできません。誰が誰を助けたのか、どのような協力があったのかを可視化し、記録として残しておくことで、評価の際に見えにくい貢献も振り返りやすくなります。

期末にまとめてヒアリングするより、日常の中でこうした事実が残っているほうが、評価者の負担も少なく、具体的な根拠として活用しやすくなります。

参考: 人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》(内閣人事局・人事院、2022年6月版)

4. 感謝の可視化で貢献を記録する

前章の最後に挙げた「見えにくい貢献を記録に残す」方法の一つが、日常の感謝のやり取りを記録に残しておくことです。

誰かに助けられた人は、その事実を知っています。「ありがとう」が形として残れば、評価者が直接見ていなかった働きを、後から確認できるようになります。

感謝を伝える手段は、朝礼での共有やチャットでの一言など、いくつもあります。

その選択肢の一つに、感謝を可視化するデジタルサンクスカードもあります。

「GRATICA(グラティカ)」は、感謝をカードにして送り合えるサービスで、誰が誰に感謝を伝えたのかを後から確認できます。

半期レビューの前に、改めて記憶をたどるのではなく、期中に交わされたやり取りを手がかりとして振り返ることができます。

面談の場面を想像すると、その価値がわかりやすくなります。「よくやってくれた」とだけ伝えるのと、「7月に〇〇さんの案件を引き受けたときのサンクスカード、見ました。〇〇さんから感謝が届いていましたね」と具体的に伝えるのとでは、受け取り方が大きく変わります。

後者であれば、評価の根拠が伝わると同時に、見てもらえていたという実感も残ります。

ここで注意したいのは、感謝の数を評価に直結させないことです。枚数の多さをそのまま点数にすると、感謝が形式的なやり取りに変わってしまいます。

あくまで、評価者の視界に入っていなかった事実に気づくための手がかりとして使い、評価そのものは評価者が事実に基づいて判断する。この線引きを保つことが、仕組みを長く機能させるうえで大切です。

5. まとめ

半期レビューが難しく感じられるのは、必ずしも評価する力が足りないからではないのかもしれません。

数字にならない働きを評価しようとしたとき、その根拠となる事実が手元にないことが、難しさにつながっている面もありそうです。

あわせて考えておきたいのは、評価に反映されなかった働きが、そのまま消えるわけではないという点です。

誰かの穴を埋め、後輩を支えた本人は、自分が何をしたかを覚えています。それが一度も言及されないまま評価が確定すると、「見られていなかった」という感覚が残ることもあるでしょう。

そう考えると、まず取り組めるのは、評価制度をつくり替えることよりも、日々の事実を残しておくことかもしれません。

次の半期レビューで、「よくやってくれた」と伝えるのか、「7月のあの対応に助けられた」と具体的に伝えられるのか。その差を生むのは、レビュー当日の準備というより、これから積み重ねていく半年間の記録なのだと思います。

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参考文献

「人事評価制度」に関する意識調査(アデコ株式会社)
人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》(内閣人事局・人事院、2022年6月版)
「人事評価の結果」に関する調査(Job総研/パーソルキャリア、2025年10月)

株式会社オーケーウェブ GRATICA編集部

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