1. 成功循環モデルとは?
成功循環モデルとは、組織の状態を「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」の循環として捉えるフレームワークです。
「成功の循環」として知られる考え方で、MIT組織学習センターの共同創設者であるダニエル・キム氏によって提唱されました。
基本的には、次のような循環で考えます。
関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質 → 関係の質
たとえば、メンバー同士が意見を伝えやすい関係であれば、異なる視点やアイデアが共有されやすくなります。そこから新しい行動が生まれ、良い結果を共有できれば、次の信頼関係につながることがあります。
このように、組織で起きていることを一つの原因と結果だけで捉えず、互いにつながった循環として見ることが成功循環モデルの特徴です。
なお、成功循環モデルは「関係の質を高めれば必ず成果が上がる」といった因果法則ではありません。
2026年に公開されたダニエル・キム氏本人への対談でも、MIT組織学習センターなどでの実践を通じて形成された考え方として説明されています。
組織の状態を振り返り、どこに課題があるのかを考えるためのフレームワークとして活用するのが適切です。
参考:
ダニエル・キム 成功の循環|株式会社ヒューマンバリュー
成功は、関係性から始まる〜ダニエル・キム博士とたどる「成功の循環」の軌跡〜|株式会社ヒューマンバリュー
2. 成功循環モデルの4つの質とグッドサイクル・バッドサイクル
成功循環モデルを理解するうえで基本となるのが、4つの「質」です。
関係の質
関係の質とは、メンバー同士の関わり方の質を指します。
単に仲が良いことではなく、互いを尊重し、必要なときに相談したり、異なる意見や課題について率直に話し合えたりする関係性です。
思考の質
思考の質とは、メンバーが仕事や課題について、どのような視点で考えられているかを指します。
異なる意見や情報に触れることで、一人では気づかなかった視点や、新たな選択肢について考えられる状態も含まれます。
行動の質
行動の質とは、考えたことを具体的な行動につなげられているかを指します。
自分から相談する、改善案を提案する、周囲と協力するなど、より良い結果に向けて実際に行動することが含まれます。
結果の質
結果の質とは、行動によって生まれた成果や状態を指します。
売上や利益といった数値だけでなく、業務が円滑に進んだ、課題を解決できた、プロジェクトを前進させられたといった仕事上の結果も含まれます。
グッドサイクルとバッドサイクル
成功循環モデルでは、4つの質が良い方向に循環する状態を「グッドサイクル」、悪い方向に循環する状態を「バッドサイクル」として捉えます。
グッドサイクルでは、まず関係の質に目を向けます。
①メンバー同士が互いの考えを尊重し、相談や意見交換がしやすくなる【関係の質】
②さまざまな意見や情報が共有され、新しい気づきや考えが生まれる【思考の質】
③自発的な提案や協力など、前向きな行動が生まれる【行動の質】
④仕事が円滑に進み、良い成果につながる【結果の質】
①成果を共有することで、さらに信頼関係が深まる【関係の質】
このように、関係の質を起点として、思考・行動・結果が良い方向へ循環していく状態がグッドサイクルです。
一方、バッドサイクルの例として、期待した結果が得られないことから、関係・思考・行動にも悪影響が広がり、さらに結果が出にくくなる流れがあります。
①期待した結果が出ず、結果への要求や管理が強まる【結果の質】
②責任追及や過度な管理によって、相談や意見を出しにくくなる【関係の質】
③失敗を避けることが優先され、新しい発想や改善案が出にくくなる【思考の質】
④指示されたことだけを行うなど、行動が受け身になる【行動の質】
①さらに結果が出にくくなる【結果の質】
このように、期待した結果が得られないなかで、責任追及や過度な管理が強まると、関係・思考・行動にも影響し、さらに結果が出にくくなる悪循環につながることがあります。
たとえば、売上目標を達成できなかったチームで、原因を十分に話し合わず「もっと行動量を増やそう」とだけ求めたとします。
メンバーが「問題点を話しても聞いてもらえない」と感じれば、課題や改善案を共有しなくなるかもしれません。その状態で行動量だけを増やしても、同じ問題が繰り返され、さらに厳しい目標管理につながる可能性があります。
グッドサイクルとバッドサイクルの違いは、単に結果が良いか悪いかではありません。結果を生み出している関係・思考・行動が、どちらの方向へ循環しているかを見ることが重要です。
参考:
ダニエル・キム 成功の循環|株式会社ヒューマンバリュー
職場に「成功の循環」を育む|株式会社ヒューマンバリュー
3. なぜ成功循環モデルでは「関係の質」から考えるのか
成功循環モデルは、4つの質が互いにつながる循環なので、理論上はどこからでも考えることができます。
それでも、ダニエル・キム氏は、組織では「関係の質」から始めることが重要だと説明しています。
メンバー同士の関係が十分に築かれていない状態で、行動や結果だけを変えようとすると、指示や管理を強めることになり、かえって関係を悪化させる可能性があります。
だからこそ、まずは互いの考えを知り、必要な情報や意見を共有できる関係を築くことが、重要な出発点になります。なぜなら、仕事では他者との情報共有や協力が欠かせないからです。
意見や情報を出せる関係が必要になる
たとえば、
「こんなことを言ったら否定されるかもしれない」
「相談すると迷惑だと思われるかもしれない」
と感じていれば、問題やアイデアがあっても表に出にくくなります。
つまり、意見がないのではなく、意見や情報を持っていても出しにくい関係になっている可能性があります。
リクルートマネジメントソリューションズが2020年9月、従業員300名以上の企業で、テレワークを月の半分程度またはほぼ毎日行っている正社員729名(一般社員443名、管理職286名)を対象に実施した調査では、上司・部下間のコミュニケーションについて、両者の認識にすれ違いが確認されています。
コミュニケーションでは、単に「伝えたか」だけではなく、相手がどのように受け取っているかを見ることも重要です。
関係の質は「仲の良さ」だけではない
関係の質を高めることは、単にメンバー同士が仲良くなることではありません。
仕事では、意見が食い違うこともあります。
そのときに、
- 必要なことを率直に伝えられる
- 相手の考えを聞ける
- 違いについて話し合える
- 困ったときに相談できる
といった関係があることが重要です。
仕事を一緒に進めるための関係が築けているかという視点で考えると、成功循環モデルの「関係の質」を理解しやすくなります。
参考:
上司・部下間コミュニケーションに関する実態調査|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
4. 成功循環モデルを組織で実践する3つの方法
成功循環モデルは、図を理解するだけではなく、日々の仕事に置き換えて考えることが大切です。
ここでは、成功循環モデルの考え方を日常業務に取り入れるために、3つの実践方法を紹介します。
1. 相手の考えを知るための対話を増やす
まずは、メンバーが自分の考えを伝えられる機会をつくります。
1on1やチームミーティングだけでなく、日常の声掛けも含まれます。
「最近どうですか」と聞くだけではなく、
「何に困っているか」
「この課題についてどう考えているか」
「ほかに方法はないか」
など、相手が持っている情報や考えを知ることを意識します。
対話の回数を増やすことよりも、互いの考えを知ることが重要です。
2. 日常の貢献や行動を認める
仕事の成果は、目立つ結果だけで生まれているわけではありません。
誰かの相談に乗った、他部署との調整を行った、問題が起きる前に対応したなど、さまざまな行動によって仕事は支えられています。
こうした貢献に気づいたときに、
「助かりました」
「ありがとう」
「この対応のおかげで進めやすかった」
と具体的に伝えることも、相手の役割や貢献を理解するきっかけになります。
結果だけではなく、結果に至るまでの行動にも目を向けることが大切です。
3. 4つの質で振り返る
期待した成果が出なかったときに、
「もっと頑張ろう」
「行動量を増やそう」
だけで終わらせず、4つの質から振り返ります。
たとえば、
- 結果:何が起きたか
- 行動:どのような行動を取ったか
- 思考:どのように考えていたか
- 関係:必要な情報や意見を共有できていたか
とさかのぼって考えます。
良い結果が出たときも同様です。
なぜうまくいったのかを関係・思考・行動まで振り返れば、次の取り組みに生かせる可能性があります。
5. 成功循環モデルを実践するときの注意点と「GRATICA(グラティカ)」
成功循環モデルを実践するときは、「関係の質を高めれば成果が出る」と単純化しないことが重要です。
組織の成果には、市場環境、事業戦略、人員、スキル、業務プロセスなど、さまざまな要因が関係します。
そのため、成功循環モデルは成果を保証する方法ではなく、組織で起きていることを複数の視点から振り返るためのフレームワークとして活用することが大切です。
日常の関係づくりを支える方法の一つとしてGRATICA
成功循環モデルの「関係の質」を考えるとき、1on1やミーティングだけでなく、日常のやり取りにも目を向ける必要があります。
仕事では、
「困っているときにフォローしてくれた」
「他部署との調整をしてくれた」
「問題に早く気づいてくれた」
など、目立ちにくい貢献によってチームが支えられていることがあります。
サンクスカードサービス「GRATICA」では、従業員同士が、日々の感謝や具体的な貢献をカードとして伝え合うことができます。
GRATICAを導入すれば、成功循環モデルのグッドサイクルが生まれるというものではありませんが、相手の行動や貢献に気づき、それを言葉にして伝え合う日常的な接点をつくる方法の一つとして活用できます。
また、こうしたやり取りを蓄積することで、普段は見えにくい人と人との関わりや、組織内でどのような貢献が生まれているのかに目を向けるきっかけにもなります。
関係の質を高める方法には、対話、1on1、振り返り、情報共有などさまざまなものがあります。GRATICAも、日常の関係づくりを支える選択肢の一つです。
参考:
成功は、関係性から始まる〜ダニエル・キム博士とたどる「成功の循環」の軌跡〜|株式会社ヒューマンバリュー
6. まとめ
成功循環モデルとは、組織の状態を、
関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質 → 関係の質
という4つの要素の循環として捉えるフレームワークです。
組織では、どうしても目に見える結果や行動に注目しがちです。
しかし、期待した結果が出ていないとき、その背景には、必要な情報を共有できていない、異なる意見を話し合えていないといった関係や思考の課題があるかもしれません。
結果だけを見るのではなく、その結果がどのような関係・思考・行動から生まれたのかまで振り返ること。
成功循環モデルは、自分たちの組織で何が起きているのかを考えるための、一つの視点として活用できます。