インナーブランディングとは?目的・メリットと具体的な施策、進め方を解説

「企業理念やビジョンを掲げているものの、社員に十分浸透している実感がない」
「理念を社員に伝えているが、日々の仕事や行動にどうつなげればよいかわからない」

こうした課題を感じている企業もあるのではないでしょうか。

企業が大切にする理念や価値観は、社内に発信するだけで自然に浸透するものではありません。社員がその意味を理解し、自分の仕事との関係を考え、日々の判断や行動につなげられる環境をつくることが重要です。

こうした取り組みを考えるうえで重要になるのが「インナーブランディング」です。

本記事では、インナーブランディングの意味や目的、取り組むメリット、うまくいかない理由を整理したうえで、具体的な進め方や施策について解説します。

目次

インナーブランディングとは?目的・メリットと具体的な施策、進め方を解説

1. インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、企業が社員など社内に向けて行うブランディング活動です。

一般社団法人リブランディング協会では、インナーブランディングを「社内で行うブランディング活動」と説明しています。企業理念やパーパス、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)など、企業が大切にする考え方やブランドの価値を社内で共有していく取り組みとして捉えることができます。

アウターブランディングとの違い

アウターブランディングは、顧客や取引先、求職者など、主に社外のステークホルダーに向けて企業や商品・サービスの価値を伝える活動です。

一方、インナーブランディングは社員など社内を対象とします。

社外にブランドの価値を伝えるのがアウターブランディング、社内でその価値を共有していくのがインナーブランディングという違いがあります。

インナーブランディングの目的

インナーブランディングの目的は、理念やブランドメッセージを社員に知ってもらうことだけではありません。

企業が大切にする価値を社員が理解し、自分の仕事や判断と結びつけて考えられる状態をつくることが重要です。

たとえば「顧客第一」という価値観でも、営業と開発では具体的な行動が異なります。理念を言葉として共有するだけでなく、自分たちの仕事では何を意味するのかまで考えられるようにすることが、インナーブランディングを進めるうえでのポイントです。

参考
・インナーブランディング研修|一般社団法人リブランディング協会
・ブランディングとは何か?使い方・意味・定義・進め方・戦略・手法|一般社団法人リブランディング協会

2. なぜインナーブランディングが重要なのか

企業理念やビジョンを定めても、それだけで社員の日々の判断や行動に反映されるとは限りません。
インナーブランディングでは、理念や価値観を伝えるだけでなく、社員がその意味を理解し、自分の仕事と結びつけて考えられる状態をつくることが重要です。

中小企業庁が2022年版中小企業白書で紹介している調査では、自社の従業員が経営理念・ビジョンに「共感・共鳴しており、行動に結びついている」と回答した企業のうち、70.1%が「経営理念・ビジョンは全社的に浸透している」と回答しています。
一方、「共感・共鳴しているが、行動には結びついていない」と回答した企業では、「全社的に浸透している」とした割合は23.0%でした。

この結果からは、従業員の共感や行動と、企業が認識する理念・ビジョンの浸透状況には関連がみられることが分かります。

つまり、理念を社内に知らせるだけでなく、社員がその意味を理解し、「自分の仕事では何を大切にするのか」「どのような行動につなげるのか」を考えられる状態をつくることが、インナーブランディングを進めるうえで重要です。

経営の方向性と日々の仕事をつなぐ

理念やビジョンは、企業が何を目指し、どのような価値を大切にするのかを示すものです。

一方で、理念が抽象的な言葉のままだと、社員にとっては自分の業務との関係が見えにくくなることがあります。

職種や役割によって、理念を体現する具体的な行動は異なります。
そのため、理念をそれぞれの仕事に置き換えて考えられるようにすることが必要です。

組織で大切にする価値観を共有する

仕事では、ルールやマニュアルだけでは判断できない場面もあります。

そのようなときに、企業が大切にする価値観が共有されていれば、判断のよりどころの一つになります。

インナーブランディングは、社員全員の考え方を同じにするためのものではありません。
会社が何を大切にしているのかを理解し、それぞれの立場から仕事との接点を考えられる環境をつくることが重要です。

参考
・2022年版 中小企業白書|中小企業庁

3. インナーブランディングに取り組むメリット

インナーブランディングに取り組むことで、企業が大切にする考え方を社員と共有し、日々の仕事との接点を考える機会をつくれます。

企業が大切にする考え方を共有しやすくなる

企業理念やパーパス、MVVなどを継続的に伝えることで、社員が 「会社は何を目指し、何を大切にしているのか」 を理解しやすくなります。

組織が拡大し、部署ごとに役割や優先順位が異なる場合でも、共通する理念や価値観は 組織としての方向性を確認する土台 になります。

社員が自分の仕事とのつながりを考えやすくなる

理念や価値観は、言葉として知っているだけでは、自分の仕事との関係が見えにくいことがあります。

対話や具体的な事例を通じて、社員が 「自分の仕事は、会社が目指すこととどうつながっているのか」 を考えるきっかけをつくれます。

日々の判断や行動のよりどころになる

仕事では、ルールやマニュアルだけでは判断しにくい場面もあります。

そのようなとき、企業が大切にする価値観や行動指針が共有されていれば、 「自社では何を大切にして判断するのか」 を考える材料になります。

特にバリューや行動指針は、具体的な業務や行動と結びつけて共有することで、理解しやすくなります。

4. インナーブランディングがうまくいかない理由

企業理念を発信したり、研修を実施したりしても、「なかなか浸透しない」と感じることがあります。
なぜ、こうした状態が起こるのでしょうか。

理念を発信するだけになっている

代表者からのメッセージや社内報、ポスターなどを通じて企業理念を伝えることは重要です。

しかし、一方向の発信だけでは、社員が内容を知ったとしても、自分の仕事との関係まで考えるのは難しい場合があります。

パーソル総合研究所の調査では、全体説明会や社内イントラなどの一方向型の施策が多く実施されている一方、研修やワークショップなどの双方向型の施策は、企業理念の浸透とプラスの関係が確認されています。

「伝えたこと」と「社員が理解し、実践できること」は分けて考える必要があります。

抽象的な言葉と日々の仕事がつながっていない

「挑戦」「誠実」「チームワーク」などの価値観は、それだけでは具体的な行動がわかりません。

何をすれば「挑戦」なのか。
どのような振る舞いが「チームワーク」なのか。

こうした具体的なイメージが共有されていなければ、社員ごとに解釈が異なり、日々の行動と結びつけにくくなります。

2025年に日本能率協会総合研究所が正社員800名を対象に実施した調査では、理念浸透を「理解・共感・行動・判断」の4つの側面で尋ねたところ、「行動」に関する肯定回答は28.3%でした。
また、理念を実践しづらい理由として、「自分の仕事とどうつながっているかわからない」「具体的にどう行動すればよいかわからない」といった回答が多く挙げられています。

理念を抽象的な言葉のまま伝えるのではなく、日々の業務や具体的な行動と結びつけて考えられるようにすることが重要です。

社員が理念について考える機会がない

理念を社内へ浸透させる際、経営層や管理職からメッセージを発信することは重要です。

一方で、社員が理念を日々の仕事に置き換えて考える機会がなければ、「会社から伝えられた言葉」のままになってしまう可能性があります。

社員自身が、これまでの業務や経験と理念を照らし合わせながら、「自分の仕事では何を意味するのか」を考える機会を設けることも必要です。

研修やワークショップ、1on1などを活用し、理念について一方的に説明するだけでなく、対話する機会をつくることが重要です。

一時的なイベントで終わっている

理念研修や社内イベントを開催した直後は、社員が理念について考える機会が増えるでしょう。

しかし、日常業務に戻った後に理念に触れる機会がなければ、継続的に意識することは難しくなります。

インナーブランディングを特別なイベントとして切り離すのではなく、会議や1on1、社内コミュニケーション、表彰など、普段の業務の中で理念や価値観に触れる機会をつくることが大切です。

理念を伝える場を一度設けて終わるのではなく、日々の仕事の中で繰り返し考えられる環境をつくることが、継続的な取り組みにつながります。

参考
・自社の理念を意識して行動している社員は3割―日々の仕事とのつながりがカギに―|日本能率協会総合研究所
・企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査|パーソル総合研究所

5. インナーブランディングを進める5つのステップ

インナーブランディングは、理念や価値観を一度伝えて終わるものではありません。社員がその意味を理解し、自分の仕事との接点を考え、日々の行動に結びつけられるようにすることが重要です。

ここでは、進め方を5つのステップに分けて紹介します。

1.理念やブランドの意味を明確にする

まず、企業理念やパーパス、MVVなどについて、何を社員に理解してほしいのかを整理します。

言葉を掲げるだけでなく、その理念を掲げる背景や、会社として何を目指しているのかを、自分たちの言葉で説明できる状態にしておくことが大切です。

経営層からの発信や社員との対話を通じて、「なぜこの理念や価値観を大切にしているのか」まで伝えることで、単なるスローガンではなく、企業としての考え方として捉えやすくなります。

2.社員が自分の言葉で考える機会をつくる

経営層や人事から理念を伝えるだけでなく、社員自身がその意味を考える機会を設けます。
研修やワークショップ、経営層との対話などを活用し、

「この価値観は、自分たちの仕事ではどのような場面に表れるか」
「最近、その価値観を感じた出来事はあったか」

といったテーマについて話し合うことで、理念を自分の仕事に引き寄せて考えやすくなります。

3.理念を具体的な行動に置き換える

理念やバリューが抽象的な言葉のままだと、社員が実際の行動をイメージしにくいことがあります。

そのため、「自社ではどのような行動がその価値観を表すのか」を具体化します。

たとえば「顧客第一」というバリューであれば、顧客の課題を丁寧に聞くことや、使いやすさを考えて改善を提案することなど、職種や役割によって具体的な行動は異なります。

社員自身が具体例を考えることで、理念を日々の仕事と結びつけやすくなります。

4.日常の中で実践を共有する

理念や価値観を日々の行動に結びつけるには、研修やイベントだけでなく、普段の仕事の中で触れる機会をつくることが重要です。

会議や1on1で業務を振り返ったり、社内報・社内ポータルで理念を体現した社員の取り組みを紹介したり、表彰や称賛を通じて具体的な行動を共有したりする方法があります。

実際の行動やエピソードを共有することで、「自社ではどのような行動を大切にしているのか」をイメージしやすくなります。

こうした実践を共有する方法の一つとして、デジタルサンクスカード「GRATICA(グラティカ)」を活用できます。

GRATICAでは、オリジナルカード機能を使って、自社の行動指針やバリューを反映したサンクスカードを作成できます。

社員同士が、相手の行動に合ったカードを送り、具体的なエピソードとともに感謝を伝えることで、理念やバリューにつながる具体的な行動を日常の中で共有できます。

理念や行動指針を掲げるだけでなく、実際の仕事の中で生まれた行動と結びつける仕組みの一つとして、サンクスカードを取り入れる方法もあります。

5.状態を確認し、継続的に改善する

インナーブランディングは、一度施策を実施して終わりではありません。

サーベイやヒアリング、1on1などを通じて、理念が理解されているか、社員が自分の仕事との接点を見いだせているかを確認し、必要に応じて取り組みを見直していきます。

発信して終わるのではなく、理解・対話・行動・共有・振り返りを繰り返すことが、インナーブランディングを継続していくうえでのポイントです。

6. インナーブランディングの取り組み事例

実際に、企業がどのように理念や価値観を社内で共有しているのか。ここでは、各社が公開している情報をもとに、2社の取り組みを紹介します。

行動規範を日常の仕事で使う|株式会社LIFULL

株式会社LIFULLは、経営理念の実現に向けて社員が日々の活動で体現する行動規範を「ガイドライン」としてまとめています。

理念を抽象的な言葉のままにせず、日々の業務や評価の場面と結びつけること、そして一度決めた内容を固定せずに見直していくこと。
同社の採用サイトでは、各ガイドラインが仕事や評価の場面など日常的に使用され、社員に浸透していると説明されています。

また、会社の状況や時代の変化によって重要となる要素は変わるため、必要に応じてガイドラインを再検討する機会も設けているとしています。

参考:経営理念と企業文化|株式会社LIFULL 採用サイト

社員に聞くことから始めた理念の再構築|株式会社共立理化学研究所

神奈川県横浜市の株式会社共立理化学研究所は、水質簡易測定器を製造する従業員50名の企業です。
2022年版中小企業白書で、事業承継を機に企業理念の再構築に取り組んだ事例として紹介されています。

特徴的なのは、理念を経営層だけで考えなかった点です。社長は社員と積極的に意思疎通を図り、「企業として何を目指し、社員は何を期待して毎日集まっているか」を聞き出しました。

その結果、多くの社員が水質測定を通じて水環境を守る同社の使命に愛着と誇りを感じていることが分かったとされています。
白書では、これは社長にとって意外な気付きだったと紹介されています。

社員の声をもとに新たな企業理念を明文化し、視覚的にも伝わるよう水のイラストも加えました。
社長は「企業理念の浸透には時間を要した」と語りますが、日々の業務や顧客との実体験と結びついていく中で社内の雰囲気も変化し、社員同士の打合せや顧客への積極的な提案も増えていったとされています。

白書掲載時点では、理念の形骸化を防ぐため、若手社員を中心にパーパスの策定にも取り組んでいました。その後、同社はパーパスとして「ブンセキをもっと身近にする」を策定しています。

2社は規模も業種も異なりますが、共通するのは理念を一方的に伝えて終わりにせず、社員が関わる形をつくっている点です。
自社で取り組む際も、社員が理念にどう関われるかを具体的に考えることが出発点になります。

参考:2022年版 中小企業白書 事例2-2-11 株式会社共立理化学研究所|中小企業庁

7. まとめ

インナーブランディングとは、企業が社員など社内に向けて行うブランディング活動です。

企業理念やパーパス、MVVなどを伝えるだけでなく、社員がその意味を理解し、自分の仕事との接点を考えられる状態をつくることが重要です。

また、インナーブランディングは一度の研修や情報発信で完了するものではありません。対話を通じて理解を深め、理念や価値観を具体的な行動に置き換え、その実践を日常の中で共有しながら継続的に見直していく必要があります。

特に、理念やバリューを実際の行動と結びつけて共有することは、「自社ではどのような行動を大切にしているのか」を社員が理解するきっかけになります。

インナーブランディングを進める際は、社内報や研修、1on1、表彰、サンクスカードなど、複数の方法を組み合わせながら、自社に合った形で継続していくことが大切です。

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参考文献

インナーブランディング研修|一般社団法人リブランディング協会
ブランディングとは何か?使い方・意味・定義・進め方・戦略・手法|一般社団法人リブランディング協会
2022年版 中小企業白書 第2部 第2章 第3節「中小企業経営者の経営力を高める取組」|中小企業庁
2022年版 中小企業白書 事例2-2-11 株式会社共立理化学研究所|中小企業庁
企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査|パーソル総合研究所
自社の理念を意識して行動している社員は3割―日々の仕事とのつながりがカギに― ~理念浸透の実態に関する調査~|日本能率協会総合研究所
経営理念と企業文化(株式会社LIFULL 採用サイト)

株式会社オーケーウェブ GRATICA編集部

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