1. 働きがいとは何か?「やりがい」との違い
「働きがい」とは、ひとことで言えば「この会社で、この仲間と働いてよかった」と感じられることです。意外と曖昧なまま使われている言葉でもあるため、もう少し丁寧に整理してみましょう。
世界約170カ国で「働きがいのある会社」調査を実施しているGreat Place To Work® Institute
Japan(GPTW)は、働きがいのある会社を「立場、仕事、働く場所に関係なく、あらゆる従業員が会社やリーダーを信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社」と定義しています。
このモデルでは、働きがいを構成する要素として以下の5つが挙げられています。
- 信用:経営・管理者層への信頼
- 尊重:従業員に対する尊重
- 公正:従業員に対する公正な扱い
- 誇り:仕事への誇り
- 連帯感:仲間との連帯感
このように、働きがいは給与や評価だけで決まるものではなく、信頼や誇り、仲間とのつながりまでを含んだ、多面的なものです。
ここで、よく混同される「やりがい」との違いを整理しておきましょう。
- やりがい:仕事そのものへの手応えや充実感
- 働きがい:やりがいに加えて、評価や処遇、職場の人間関係、成長の機会なども含め、「この職場で働き続けたい」と思える総合的な実感
そして、多面的な働きがいの中心にあるのが、「自分の仕事は誰かの役に立っている」という「貢献実感」です。
どれだけ制度が整っていても、自分の働きが誰かに届いている手応えがなければ、働きがいは育ちにくいのです。
本記事では、この「貢献実感」をどう生み出すかという視点から話を進めます。
参考:Great Place To Work®
Institute Japan「全員型『働きがいのある会社』モデル」
2. なぜ制度だけでは「働きがい」が生まれないのか
「働きがいを上げるために、まず何をすべきか」と問われたとき、多くの企業は制度設計から手を付けます。
給与水準を見直す、福利厚生を充実させる、評価制度を整える。もちろん、これらは必要な投資です。しかし、それだけでは働きがいは生まれません。
この構造を端的に説明するのが、ハーズバーグの「二要因理論」です。
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは1959年、200人のエンジニアと経理担当事務員を対象に調査を行い、仕事への「満足」に関わる要因と、「不満足」に関わる要因は異なるものとして整理しました。
- 衛生要因:給与、労働条件、福利厚生、対人関係など。不足すると不満を生むが、満たしても満足にはつながらない要因
- 動機付け要因:達成、承認、仕事そのもの、責任、成長など。満たされると満足を生む要因
ここで重要なのは、衛生要因は「不満を解消する」ための要素であり、満足を生む要素ではないということです。
給与を上げても、福利厚生を充実させても、それは「マイナスをゼロに戻す」効果しかありません。
満足感・充実感といった働きがいを生むのは、「達成」や「承認」といった動機付け要因のほうです。とりわけ承認は、自分の貢献が誰かに認められて初めて得られるものであり、「貢献実感」と分かちがたく結びついています。
「制度を整えたのに社員の熱量が上がらない」という現象の正体は、ここにあると考えられるでしょう。
衛生要因ばかりに投資して、動機付け要因への投資が不足している。これが、多くの企業が直面している構造的な課題なのです。
参考:HRpro「衛生要因とは」(ハーズバーグの二要因理論の解説)
3. 働きがいを感じる職場に共通する3つの条件
では、人と人とのつながりを育み、動機付け要因を満たす職場には、どんな共通点があるのでしょうか。整理すると3つに集約できます。
① 仕事の意味を感じられる
自分の仕事が何のためにあり、誰の役に立っているのか。それが見えている職場では、人は日々の業務に意味を見いだせます。
数字で表れる成果だけでなく、「縁の下の支え」「人をつなぐ役割」といった、評価には反映されにくい貢献にも光が当たることで、「自分はここで必要とされている」という実感が生まれます。
② 良い人間関係がある
安心して発言でき、困ったときに頼り合える。そんな信頼でつながった職場は、働き続ける意欲の土台になります。
逆に、職場の人間関係が冷え切っていれば、意欲は続きにくくなります。
厚生労働省の「令和元年版
労働経済の分析(労働経済白書)」では、仕事から活力を得ていきいきと取り組む状態を表す「ワーク・エンゲイジメント」が高いほど、新入社員の入社3年後の定着率が高く、離職率は低い傾向がみられると分析されています。
同白書はこの状態を「働きがい」と重ねて整理しており、働きがいを感じられる職場ほど、人は辞めにくいということです。
そして、その土台にあるのが、日々のやり取りの中で築かれる良好な人間関係なのです。
参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析(労働経済白書)」第2-(3)-10図 ワーク・エンゲイジメントと定着率・離職率について
③ 成長と承認を感じられる
努力や貢献が誰かに気づかれ、言葉として返ってくること。これは、人が前に進む力になります。
前野隆司教授(武蔵野大学ウェルビーイング学部長/慶應義塾大学名誉教授)の幸福学研究でも、「ありがとう因子」(つながりと感謝)は人の幸福度を支える中核因子の一つとされています。
前野教授は当社のインタビューでも、誰かを助ける、感謝する、きちんと挨拶する、そうした日常の小さな実践こそが「ありがとう因子」を満たすと語っています。
この3つの条件は、いずれも「自分の貢献が誰かに届き、認められる」という一点で重なります。
つまり、働きがいの中心にあるのは「貢献実感」であり、それを支えるのが日々の感謝・承認のやり取りなのです。
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4. 「感謝の仕組み」が働きがいを底上げする理由
ここで本質的な問いに行き当たります。「感謝が大切」なのは誰でもわかる。問題は、それをどう日常に根づかせるかです。
「貢献実感」は、自分一人では完結しません。「ありがとう」という反応が返ってきて初めて、自分の働きが誰かの役に立ったと実感できます。
感謝や承認は、見えない貢献を可視化する仕組みの一つなのです。
一方で、偶然や個人の善意に頼った「ありがとう」は、続きません。
対面で口頭で伝える「ありがとう」は、その場で消えていきます。リモートワークやハイブリッドワークの広がりで、そもそも伝える機会自体が減っている職場も少なくありません。
マネージャーはチーム内のつながりを肌感覚で把握しにくくなり、経営層は組織の「人間関係の健康状態」を数字で見ることができなくなる。多くの企業が直面している現実です。
だからこそ、感謝を「仕組み」にすることが重要になります。
仕組み化することで得られる効果は、次の3つです。
まずは、継続性が生まれる。個人のモチベーションに左右されず、組織の日常として感謝が流通するようになります。
次に、可視化が進む。誰が誰に感謝を送っているか、どの部署間の交流が活発かといったやりとりが蓄積されることで、組織の健全性を「肌感覚」ではなく「データ」で把握できるようになります。
そして、良い行動が連鎖する。感謝されている様子は、周囲にも伝わります。
「こういう行動が大切にされているのか」という共通認識が、自然と組織文化として根づいていきます。
こうした考え方を仕組みとして支援するサービスの一つがGRATICAです。
GRATICAは、感謝・承認の可視化と組織サーベイを通じて、働きがい向上と組織改善を支援するサービスです。
GRATICAにはサンクスカードに加えて、前野隆司教授の監修のもとに幸福学の知見をベースにした、組織サーベイ機能も備わっています。サーベイで「数値」として組織の状態を把握し、サンクスカードで「行動」として感謝・承認のやり取りを動かす。
「測る」と「動かす」が一つのプラットフォーム上で連動することで、働きがい向上のための改善サイクルを回すことができます。
「うちの組織は、本当に働きがいのある職場と言えるだろうか」「社員はやりがいだけでなく、働きがいを感じているだろうか」などの問いに、データと日々の行動の両面から答えを出せる仕組みです。
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5. まとめ
働きがいの中心にあるのは「自分の仕事は誰かの役に立っている」という「貢献実感」です。そしてその実感は、日々の感謝・承認のやり取りによって生まれ、育っていきます。
感謝や承認を個人の善意や偶然に任せていては、文化として根づきません。
GRATICAは、前野隆司教授の監修による幸福学ベースの組織サーベイで組織の状態を把握し、サンクスカードで日々の感謝・承認のやり取りを動かします。
「測る」と「動かす」を両輪で回すことで、働きがいは制度ではなく文化として組織に根づいていきます。
日々の「ありがとう」を組織の中で自然に循環させること。人は、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できたときに、働きがいを感じます。その積み重ねが、働きがいのある職場づくりにつながっていくのです。